
経済産業省は7月14日に開催した専門家会合(電力安定供給ワーキンググループ)で、需給調整市場の一次調整力、二次調整力①、複合商品の上限価格を、現行の15円/ΔkW・30分から10円/ΔkW・30分へ引き下げる案を示した。2026年9月1日受渡分からの適用を予定している。
同省は2026年3月14日受渡分から、前日取引化や上限価格引き下げなどの変更を実施し、その後の市場動向を継続的にモニタリングしてきた。その結果、競争環境に一定の改善はみられたものの、十分とは評価しがたいと判断したためだ。
制度変更後の5月9日〜7月3日までの取引実績によると、応札量は制度変更前に比べ、全体として増加傾向にある。一方、30分コマ単位でみると、依然として募集量を満たさない時間帯が一定数確認された。また、複合商品と一次調整力では、応札価格が引き続き上限価格付近に集中し、その価格帯でも約定する状況が続いていた。
応札価格が高止まりする要因について事業者にヒアリングしたところ、火力では起動費や限界費用の高い電源が応札されていることに加え、スポット市場価格の影響などが挙げられた。例えば、スポット市場価格が0.01円/kWhなど極めて低い時間帯では、「逸失利益(機会費用)」が拡大し、結果的に需給調整市場への応札価格が高くなる傾向にあるという。逸失利益は、ΔkWを確保することに伴い、事業者がその後の卸電力市場に応札できなくなる不利益分を指し、限界費用から市場価格を差し引いた額に相当する。
一方、蓄電池では、一部設備で償却期間を約6年と短く設定していることから、減価償却費の負担が大きく、応札価格が上昇したとの回答があった。
さらに、上限価格を10円に引き下げた場合の応札行動についてもヒアリングを実施した。火力では、逸失利益を基に応札価格を設定しているため、価格が上限を超える場合には応札を控えるとの回答が多かった。一方、蓄電池やVPPでは、他市場との収益性を比較した上で応札価格を引き下げ、応札を継続するとの回答が多かった。
これらの影響について同省は、火力や揚水の応札減少分の一部は余力活用による市場外での調達に置き換わることが想定されるため、直ちに調整力の確保に支障が生じるものではないと整理した。また、高価格帯での約定が抑制されることで、市場調達コストの低減が見込まれる。そのほか、一般送配電事業者からは、余力活用による代替調達は市場調達より低コストとなる場合が多いとの見解も示された。
経産省は、2026年3月に上限価格を19.51円から15円へ引き下げた際、競争状況が十分改善しない場合にはさらなる段階的な引き下げを検討する方針を示していた。今後も市場における競争状況や市場外を含めた調整力調達全体の状況を継続的に確認し、必要に応じて募集量や上限価格の見直しを検討するとしている。2025年10月の専門家会合(制度検討作業部会)では、一次〜三次①を一律で7.21円/ΔkW・30分へ引き下げる案も示されていたことから、さらなる見直しが行われる可能性もある。