
経済産業省は、5月13日に開催した専門家会合(電力安定供給ワーキンググループ)で、需給調整市場での前日取引化と上限価格引下げ後の市場変化について、検証を行った。その結果、同省は「十分な競争が働いているとは評価しがたい」との見方を示した。
需給調整市場では、応札未達の解消や調達コストの高騰抑制を目的として、2026年3月14日受渡分から一次調整力・二次①・複合商品の募集量と上限価格の引下げを実施したほか、取引時期を前週から前日へ変更した。
検証は一次調整力と複合商品を対象とし、前日取引化前後それぞれ28日間の取引実績をもとに、募集量と応札量の関係や応札価格の分布について分析した。なお、二次①は、対象期間における単独での応札数が少なかったため、検討の対象外となった。
一次調整力の募集量は3月14日受渡分より「3σ相当量」から、調整力が必要となる事象のうち約84%をカバーする「約1σ相当量」へ引き下げられた。これは、応札率の向上を期待した見直しによるものである。見直し後、平均応札量は変更前の2,300万から2,800万ΔkW・h/日に増加した。また、募集量に対する不足率も46.3%から36.3%へ改善したものの、依然として応札未達の状況が続いている。
また、複合商品の募集量は市場外調整力の控除が終了したことにより募集量は増加したものの、応札量も増加し、募集量を上回る状況が継続している。
エリア別データでは変化に差がみられた。関西エリアの一次調整力では、応札量の減少に加え、不足率も17.7%から30%へ上昇。一方、東京エリアでは応札量が増加し、不足率も75.8%から49%に改善したものの、依然として高水準で不足している。
さらに、応札価格の分布にも変化がみられ、一次・複合商品ともに、安値応札の割合が減少した。具体的には、7円以下および10円以下の応札累積割合は、一次調整力は約6〜8%減少し、複合商品はそれぞれ約4%減少した。一方、引き下げ後の上限価格である15円付近では、14円以上の高価格帯の応札割合が一次調整力の場合は12.1%から11.6%へと微減、複合商品は3.4%から4.8%へ上昇した。この価格帯では一部未約定がみられるものの、高値応札でも約定可能な市場環境が続いている。
また、高値応札をする電源種にも大きな変化があった。前日取引化前は、一次調整力で14円以上の応札のうち、約95%を蓄電池が占めていたが、前日取引化後はその割合が約63%へと減少した。複合商品については、約84%から37%へと半減した。一方で、火力による高値応札は一次調整力が変更後に約4倍、複合商品が約11倍に増え、市場環境の変化がみられる。
経産省は応札未達や上限価格付近でも約定できる状況について、市場競争が十分に機能していないとみている。状況が継続した場合には、一次・二次⓵・複合商品における価格上限について、10円や7.21円/ΔkW・30分などへの段階的な引き下げを検討する可能性があるとしている。
なお、今回の評価に用いたデータは、前日取引開始後の約1ヵ月間における実績に限られており、事業者の応札行動がまだ定着していない可能性もある。また、年度切り替えに伴う契約関係の変化や、系統連系が見込まれる系統用蓄電所などの参入により、需給調整市場への応札量の増加が予想される。
同省は2026年3月時点で、前日取引開始後、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月などの節目で、応札量や応札価格の分布、余力の価格水準などを検証するとしていた。そのため、今後も市場動向を継続的に注視するとみられる。