
北海道電力ネットワーク(以下、北電ネットワーク)は、2026年度の揚水随意契約(揚水随契)を実施しない方針を決めた。これは同社が、2026年6月に開催された専門家会合(制度設計・監視専門会合)で報告したもので、需給調整市場を通じて調整力を確保する方針を示した。
揚水随契は、一般送配電事業者が揚水発電による調整力を確保するために結ぶ相対契約で、需給調整市場を介さずに直接調達する市場外調達にあたる。
2025年度は北電ネットワークのほか、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、関西電力送配電などが調達を実施した。2026年度は、現在までのところ、東北、東京、中部、関西、中国の各社が揚水随契を締結した。
北電ネットワークも、2026年1月末時点で揚水随契の必要性は認めていた。しかし、2025年度の揚水随契が終了した後も、火力発電の応札価格の低下や系統用蓄電所の増加により、安価なリソースが市場で増えていると分析している。2026年4月以降、需給調整市場の複合商品における全リソースの不落率は低下した。一方で、レベニューキャップ申請単価以下での応札に限ると、不落率が8%から15%へ上昇した。同単価は一般送配電事業者が調整力調達費用として想定している基準単価で、北電ネットワークの2026年度の水準は4.70円/ΔkW・hとなっている。
こうした状況で市場外調達である揚水随契を実施すれば、市場で調達する調整力の募集量が減り、安価なリソースの不落がさらに増え、市場競争を妨げるおそれがある。北電ネットワークはこう判断し、2026年度は市場を活用して調整力を確保する方針を選択した。
この判断は、東北、東京、中部、関西、中国とは異なる。継続実施を決めた各社は、2025年度の揚水随契について、安定的な調整力の確保に寄与したことに加え、総合的な調達コストを抑えられたと評価している。多くのエリアでは一次調整力の未達が依然として残っており、市場参加の機会を過度に制限するものではないとの認識を示している。
北電ネットワークが市場競争に一定の期待を寄せる背景には、系統用蓄電所の導入拡大もある。エネハブの系統用蓄電所データベースによると、北海道エリアで運転開始済みまたは系統接続済みの案件は2026年7月時点で10件・約167MW/369MWhとなる。計画・建設・試運転中の案件は40件・約1,300MW/5,700MWhに達しており、今後も市場参加リソースの増加が見込まれる。
需給調整市場では、競争環境の改善に向けた制度見直しも進められている。経済産業省は、上限価格の引下げなどの制度変更後の取引状況を継続的にモニタリングした結果、十分な改善が見られていないと判断した。7月14日に開催した専門家会合では、一次調整力、二次調整力①、複合商品の上限価格を10円/ΔkW・hへ引き下げる案を示している。今後も市場競争の活性化に向けた制度改善が進むなか、各エリアの調達方針がどのように市場価格に反映されるか注目される。