
関西電力は5月7日、きんでん、ジャパン・エクステンシブ・インフラストラクチャー(以下、「JEXI」)と共同で系統用蓄電所(99MW/396MWh)を開発すると発表した。
同蓄電所は、大阪府岬町の多奈川発電所跡地に建設され、今年6月に着工し、2028年2月の運転開始を見込んでいる。
EPC(設計・調達・建設)はきんでんが担当し、運転開始後のO&M(運用・保守)はきんでん関西サービスが、合同会社の運営管理は関電アセットマネジメントが担う。また、関西電力グループのE-Flowがアグリゲーターとして卸電力市場や需給調整市場、容量市場で取引を行う。
関西電力、きんでん、JEXIは今年3月にSPC(特別目的会社)である「多奈川蓄電所」を設立。出資比率は関西電力が40%、きんでんが10%、JEXI関連ファンドが50%である。加えて、三菱UFJ銀行がノンリコースでのプロジェクトファイナンスを組成している。ノンリコース・ファイナンスとは、特定の事業や資産から生じるキャッシュフローのみを返済原資とするローンである。
蓄電所の建設予定地には、かつて石油火力の「多奈川発電所」(4基、合計出力:462MW)が稼働していたが、2001年12月に廃止。また、同発電所に隣接して稼働していた、同じく石油火力の「多奈川第二発電所」(2基、合計出力:1.2GW)は2005年に設備の老朽化のため停止し、2020年に廃止された。建設予定の系統用蓄電所の敷地面積は20,000m2であり、第二発電所の跡地も含まれるかどうかは現時点では明らかになっていない。
関西電力は昨年12月、和歌山県にオリックスと共同で「紀の川蓄電所」(48MW/113MWh)の運転を開始し、系統用蓄電所事業へ参入。現在はスパークス・グループ、JA三井リースと共同で北海道札幌市に各50.0MW/175.5MWhの系統用蓄電所2ヵ所の開発を進めており、いずれも2028年4月の運転開始を予定している。
火力発電所の跡地は、広大な敷地面積や既存系統を活用できるといった点から、大規模な系統用蓄電所開発における適地である。中国電力は今年1月、2023年に廃止となった石油火力の「下松発電所」(出力:700MW)の跡地に同社初となる系統用蓄電所(10MW/30MWh)の建設を発表した。脱炭素化への動きが加速するなか、老朽化した火力発電所の廃止に伴い、このような転換がさらに進むと考えられる。