
多くの反対意見が寄せられた
経済産業省は6月3日、洋上風力発電に関する「公募占用指針改訂案」に対するパブリックコメントの結果を公表した。寄せられた166件のうち、109件は第1ラウンドで落札したFIT案件がFIPへ移行できることに関する意見だった。
反対意見の多くは、第1ラウンドの入札時点でFIPへの移行が可能であると明示されていれば、入札価格や事業戦略が変わっていた可能性があり、公平性が損なわれたとする懸念に基づくものだ。また、過去に成立した契約条件を遡って変更することは、制度運用上の前例となりかねず、望ましくないとする指摘もあった。
さらに、第1ラウンドの落札案件がFIT価格のままFIPに移行できる場合、コーポレートPPAの交渉において他の事業者にとって不利に働く可能性があるとの声も寄せられた。特に、第2・第3ラウンドでは、5件の落札案件のうち4件がゼロプレミアム水準の3円/kWhで落札しており、プレミアムが支払われない前提で入札していたことから、不公平であるといった意見が挙がった。
これらの反対意見に対し、経済産業省は今回の公募占用指針の改訂案は「制度変更」ではなく、あくまで「運用の明確化」であると説明している。また、FIP制度は2022年4月に導入されており、FIT電源のFIPへの移行が制度上認められるものであり、今回の改訂に合わせてルールを明確化する考えであることが示された。なお、第1ラウンドの入札期間は2021年12月〜2022年6月であった。
一方で、三菱商事が第1ラウンドで落札した3海域の案件について、事業性の再評価を行っていることが発表されており、エネハブが報じた通り、FIPへの移行が実現するかどうかは不透明なままである。業界内の一部では三菱商事の落札案件への「救済措置」と見なす考えもあり、パブリックコメントを通じた反対意見を受けて、全面的あるいは部分的な見直しが行われる可能性もある。
仮にFIPへの移行が認められなかった場合には、第1ラウンドで落札された案件の実施が困難になるおそれがある。一方で、FIPへの移行が実行されれば、第1ラウンドで落選した事業者や第2・第3ラウンドの入札参加者、あるいは落札者からのさらなる反発を招くことも想定され、今後の動きが注目される。