
(画像:東北電力)
東北電力は10月1日、新潟市の「新潟火力発電所」5号系列(出力:109MW)を2028年3月に廃止すると発表した。これにより、同発電所におけるすべての設備が廃止となり、約65年にわたる運転の歴史に幕を下ろす見通しである。
同社は廃止の理由について、「再生可能エネルギーの増加等により運転機会が著しく減少しており、今後の需給動向や供給力確保の見通しなどを総合的に評価した結果、廃止することとした」と説明している。東北電力は今後も火力発電の競争力強化と安全運転の徹底を図るとともに、電力の安定供給とカーボンニュートラルの両立を目指す方針だ。
新潟火力発電所は、1963年7月に1号機(出力:125MW)の運転を開始して以降、2号機(出力:125MW)、3・4号機(各出力:250MW)を段階的に増設した。いずれも、天然ガス・重油を燃料とした火力設備で、1・2号機は1983〜1984年に、3号機は2009年、4号機は2018年に廃止された。
5号系列は、老朽化した3号機の後継としてガスコンバインドサイクル方式を採用し、2011年7月に運転を開始した。同年の東日本大震災および新潟・福島豪雨の影響で供給力が不足した際には、緊急設備電源である6号機(出力:34MW、2012年1月〜2015年3月稼働)とともに、供給力の一部を担った。
新潟火力発電所は、東北電力が保有する8ヵ所の火力発電所(合計出力:10GW超)のうち、最小規模であった。このほかの火力発電設備には、LNG火力の「東新潟火力発電所」(出力:約4.2GW)、石炭火力の「原町火力発電所」(出力:2.0GW)、「能代火力発電所」(出力:1.8GW)などがある。
一方、火力発電所の廃止後の跡地活用として、再エネ発電や蓄電所への再開発を行う動きが全国で進んでいる。例えば、四国電力は「松山火力発電所」跡地において「松山太陽光発電所」(出力:2MW)を開発し、2025年8月にはCHC Japanと共同で「松山蓄電所」(12.0MW/35.8MWh)の運転も開始した。関西電力も「多奈川発電所」跡地において「多奈川蓄電所」(99MW/396MWh)の開発を進めている。
こうした動向を踏まえ、東北電力が新潟火力発電所跡地を再エネや蓄電所に活用する可能性もある。既存の系統連系インフラを活かせる立地であることから、今後の事業展開が注目される。