丸紅新電力、英・SmartestEnergyと折半出資で電力トレーディング会社を設立

2025年10月7日
丸紅新電力は、高いシェアを誇る新電力である
(画像:丸紅)

丸紅新電力は、英・エネルギートレーディング企業のSmartestEnergyと共同で、電力取引を行う新会社「丸紅パワートレーディング」を設立した。国税庁の公開資料によると、法人番号の登録は2025年8月15日付で完了している。

Bloombergは9月30日付で、本件が丸紅新電力とSmartestEnergyによる折半出資の合弁事業であると報じている。関係者の話によると、同社は現物電力取引や電力・燃料の先物取引を手掛ける予定で、丸紅新電力の国内市場における基盤と、SmartestEnergyの海外市場での取引経験を融合する狙いだとしている。また、関東・関西エリアを除くエリアでの固定価格商品の提供も検討しているという。

丸紅は、2000年の特別高圧電力の小売自由化を機に電力小売事業に参入し、2004年および2005年の規制緩和に伴って高圧市場にも展開。2011年には、「丸紅パワーサプライ」を設立し、2015年11月に「丸紅新電力」に商号を変更した。2016年4月の小売全面自由化以降は、低圧需要家向けのサービスも開始した。

経済産業省のデータによると、丸紅新電力は2025年5月時点で供給電力量において新電力第3位となっており、東京ガスおよびエネットに次ぐ規模である。特別高圧部門でも第3位、高圧部門では第2位のシェアを誇る一方、低圧部門では62位にとどまっており、主に大口需要家を対象とした事業展開が中心となっている。

一方、SmartestEnergyは2000年に再エネ電源のアグリゲーション事業を展開するために設立され、2008年にはイギリスの法人向け電力小売市場に参入した。さらに、2019年にアメリカ、2020年にオーストラリアへと海外展開を進めてきた。同社は、日本で現物電力取引事業を開始した外資系企業(ゴールドマン・サックス証券、Axpo、Vitol、MFT Energyなど)に続く存在である。

日本国内では現在、再エネ電源の固定価格買取制度であるFITから市場連動型のFIP制度への移行が進むなかで、電力価格の変動リスクが高まっている。また、大規模蓄電所の増加や、小売電気事業者によるリスクヘッジ手段としての先物取引の活発化などを背景に、電力取引サービスへの需要が拡大している。

こうした市場環境を踏まえ、今回の合弁事業は、欧州市場で豊富な取引経験を有するSmartestEnergyと、日本国内に強固な販売基盤を持つ丸紅が連携することで、市場参入の初期コストを抑えつつ、ビジネス機会を迅速に捉える事例となる。特に、需要家の新規開拓や制度対応における負荷を軽減しながら、競争力のある商品・サービスの提供が期待される。

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