
ユーラスエナジーホールディングス(以下、「ユーラスエナジー」)は、鹿児島県の大隅半島で計画していた「(仮称)垂水風力発電事業」(最大出力:192MW)の建設を中断したと、複数のメディアが9月17日に報じた。資材や労務費の高騰により、事業採算性の確保が困難になったためとしている。
同事業は、垂水市、鹿屋市および霧島市の計画地に、出力4〜6MWの風力タービンを最大32基設置する計画で、2022年7月に計画段階環境配慮書を、2023年1月に方法書を公表していた。計画当初は、2026年の着工、2029年の運転開始を目指していた。
しかし、計画地の約8割が鹿児島大学の演習林と重なっており、大学側は「研究・教育に支障を及ぼす可能性がある」として、2023年12月に建設拒否を表明。同社は規模縮小など、計画の見直しを迫られていた。
同社は国内最大規模の風力発電事業者であり、2025年9月22日時点で40ヵ所(合計出力:1.2GW)の風力発電所を運転中で、さらに6ヵ所(合計出力:196MW)の開発を進めている。九州エリアでは「ユーラス肝付ウインドファーム」(出力:30MW)、「ユーラス輝北ウインドファームⅡ」(出力:6MW)が稼働しているほか、2025年6月に「ユーラス輝北ウインドファームⅠ」(出力:20.8MW)のリプレース工事にも着手しており、今回の事業はこれらを大きく上回る国内最大規模の案件になる予定だった。
近年、インフレやコストの上昇を背景に、大型風力発電の中止が相次いでいる。JR東日本開発は2024年9月、山形県米沢市で計画していた「栗子山風力発電事業」(出力:最大34MW)の中止を決定。2025年8月には、Daigas G&Pソリューションが北海道で「(仮称)苫東厚真風力発電事業」(出力:34.4MW)の中止を発表した。さらに同月、三菱商事が洋上風力第1ラウンドで落札した3海域(合計出力:1.7GW)すべてからの撤退を決めている。
ユーラスエナジーは、採算のめどがついた場合には、計画を再開する可能性もあるとしている。