
(画像:JERA)
国内最大の発電事業者であるJERAは12月9日、イギリスの石油大手BPと洋上風力発電事業を統合することを発表した。両社は、2025年9月末を目処に合弁会社である「JERA Nex bp」(出資比率50:50)をイギリスに設立することで合意した。
両社の発表によると、まずは日本を含め、北西ヨーロッパおよびオーストラリアにおいて先行して開発を進め、現在開発を検討している案件についても引き続き検討を行っていくという。
今回の洋上風力発電事業の統合により、両社は成長に向けた戦略的なプラットフォームを構築し、両社の専門知識を組み合わせることで先行して開発を進めている案件を推進していく予定である。また、資金調達の面でも競争力を高めていく狙いがある。両社は、開発資金として2030年末までに最大58億ドル(約8,700億円)を出資するという。
日本国内では、JERAが2024年1月に商業運転を開始した112MWの石狩湾新港洋上風力発電所と、現在開発中の315MWの秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖のプロジェクトが統合される。前者はグリーンパワーインベストメントと、後者は電源開発、東北電力、伊藤忠商事との共同開発である。
一方、BPは丸紅と国内の洋上風力を共同開発していくためのパートナーシップを構築することで2022年3月に合意したことを発表。今年7月に締め切られた「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)に基づく促進区域に指定されている「山形県遊佐町沖」の公募(第3ラウンド)においては丸紅、関西電力、東京ガスとともに入札しているとも言われている。
先月開催された、経済産業省の審議会(洋上風力促進ワーキンググループ)では世界的に洋上風力発電事業の中断や事業者が撤退する事例が散見されていることを踏まえ、保証金制度の見直しや価格調整スキームの今後の適用範囲について議論された。サプライチェーンの逼迫やインフレの影響による事業の不確実性がその背景にあり、JERAとBPの洋上風力発電事業の統合も、より事業の確実性を高めるための戦略の一つと考えられる。今後の洋上風力発電事業に関連する制度の方向性については、有料会員向けの月次レポート「電力制度&市場トラッカー」をご覧ください。