
出資している(画像:DGPS)
Daigasガスアンドパワーソリューション(以下、「DGPS」)は8月19日、北海道苫小牧市と厚真町にまたがる陸上風力発電事業「(仮称)苫東厚真風力発電事業」の開発中止を発表した。建設費を含むコスト上昇により採算性の確保が困難と判断したことが主な理由である。
同事業は、2026年3月の着工、2028年4月の運転開始を目指していた。中止の決定に伴い、環境影響評価法に基づく「第一種事業の廃止等通知書」を経済産業大臣や北海道知事など関係者へ提出した。
事業の環境影響評価手続きは2020年に開始され、2021年に公表された「方法書」では最大出力を38MWとしていた。しかし、2024年の「準備書」では、系統接続の制約を受け、34.4MWに引き下げられていた。さらに2025年4月には、環境省や地元関係者から生態系への影響を懸念する声が上がり、事業規模を半分に縮小する方針を固めたと共同通信が報じていた。
DGPSは現在、国内7ヵ所(合計出力:135MW超)の陸上風力発電所に出資しており、加えて、火力、太陽光、バイオマス発電所にも出資している。2021年9月には、北海道寿都町および蘭越町に位置する「尻別風力発電所」(出力:25.3MW)の運転を開始した。
今回の中止は、昨今のインフレや円安の影響が、稼働中の事業のみならず、計画段階の案件にまで影響を及ぼしている実態を示している。こうした状況は、陸上風力にとどまらず、洋上風力などにも影響を及ぼしている。経済産業省は、再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)に基づく洋上風力発電の公募後に、基準価格を物価変動に連動させる仕組みの導入を検討している。また、帝国データバンクは、2024年度の発電事業者の倒産件数は過去最多を記録しており、発電事業者を取り巻く経営環境が厳しいことを表している。