
(画像:長野県)
長野県企業局は10月1日、飯島町で新設した水力発電所「越百のしずく発電所」(出力:1.5MW)の運転を開始した。同発電所で発電される電力は、中部電力ミライズを通じて、セイコーエプソン(以下、「エプソン」)の伊那事業所にオフサイトPPAにより供給される。
供給電力量は、年間5.5GWhを見込んでおり、余剰電力についてはエプソンの県内の他事業所に供給される見込みだ。
本取り組みは、長野県企業局、エプソン、中部電力ミライズの3社が2021年5月に開始した「信州Green電源拡大プロジェクト」の一環として実施された。同プロジェクトは、県内の水力資源を活用し、オフサイトPPAによって、その売電収益の一部を水力発電所の新設やリパワリング(水車・発電機等の一括更新)に再投資する仕組みとなっている。
越百のしずく発電所は、同プロジェクトで長野県企業局が初めて開発した電源であり、プロジェクトとしては4件目の発電所となる。これまでに運転を開始したのは、中部電力のFIT案件であり、新設された「黒川平水力発電所」(出力:170kW、2021年7月運転開始)および「清内路水力発電所」(出力:5.6MW、2023年10月運転開始)、リパワリングを行った「二股水力発電所」の3件である。
なお、経済産業省のFIT/FIP認定データベースによると、越百のしずく発電所は、かつて長野県企業局が2021年度にFIT認定(FIT価格:27円/kWh)を受けた、出力1.7MWの水力発電所と同じ場所に建設されたとみられる。しかし、エネハブの調査によると、2025年8月31日時点の最新データベースには当該案件が掲載されていないことが確認されており、9月以降に新たな認定を受けていない限り、現時点では非FIT/非FIPで運営している可能性がある。
「信州Green電源拡大プロジェクト」では、第2弾として民間企業5社(キッセイ薬品工業、キッツ、KOA、八十二銀行、ユウワ)が2023年11月に新たに参画しており、5社の参画後に実施された具体的な案件の一つが、二股水力発電所のリパワリングである。また、長野県企業局は第2弾の一環として「湯の瀬いとおしき発電所」(出力:860kW)の新設も進めており、2025年度中の運転開始を予定している。
エプソンは2021年4月より、長野県内の13拠点において「信州Greenでんき」を導入し、使用電力の100%再エネ化を達成している。今回の取り組みでは、その一部を新設発電所由来の電力に切り替えることで、再エネ開発の支援を進めている。
長野県企業局が保有する水力発電所は、2025年度末までに36ヵ所・合計111.5MWに達する見通しであり、2015年度比(出力ベース)で約1.1倍となる。県内ではこのほかにも、駒ヶ根市での水力発電所の新設や既存設備のリパワリングも進めている。