
焦点となっている
経済産業省・資源エネルギー庁は7月4日、専門家会合(電力システム改革の検証に基づく制度設計ワーキンググループ)において、小売電気事業者に将来の電力需要に応じた量的な供給力(kWh)の事前確保を義務づける制度案を提示した。これにより、小売電気事業者は電力供給や価格リスクをヘッジすることが求められる見通しだ。
現行の電気事業法では、小売電気事業者には設備的な供給力(kW)を確保する義務が課されており、これを容量市場における容量拠出金の支払いによって履行している。容量市場は2020年度に導入され、4年後の供給力を確保する制度として機能している。
専門家会合において新たに検討されている制度では、実需給の3年度前に各小売電気事業者の想定需要の5割、実需給の1年度前に7割に相当する量の供給力(kWh)を確保することが求められる案となっている。
また、経産省は小売電気事業者にとって過大な負担が生じないよう、制度設計にあたっては考慮する方針である。さらには、供給力の調達手段や調達電源の自由度を確保しつつ、義務違反が生じた場合には小売電気事業者登録の取り消しを含む措置も視野に、制度設計を進める計画だ。
背景には、スポット市場価格の変動が激しく、客観的な電力価格指標としての活用が難しい現状もある。また、リスクヘッジをしていない小売電気事業者の撤退により、需要家が意図しない契約解除や、需要家の最終保障供給への移行などの混乱が発生している。
2016年4月に電力小売の全面自由化が実施されて以降、小売電気事業者の数は約2.7倍に増え、2025年5月末時点では784事業者に達した。競争が激化する一方で、業績の悪化による買収や市場退出も相次いでいる。その一例として、U-NEXT HOLDINGSの子会社であるU-POWERは2025年4月、業績が悪化していた「くこくエネルギー株式会社」の全株式を1円で取得する計画を発表し、翌月に取得が完了したとみられる。
小売電気事業者に将来的な電力需要(kWh)を部分的にヘッジすることが求められるようになれば、従来の短期取引からコーポレートPPAを含めた中長期の相対取引、先物市場、先渡市場、ベースロード市場での取引が増加すると見込まれる。こうした取引の拡大は、電力市場の安定化につながると見込まれている。