
建設までの間の物価上昇の問題に直面している
経済産業省は、再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)に基づく洋上風力発電の公募後に、基準価格を物価変動に連動させる仕組みの導入を検討している。
経済産業省の専門家会合(洋上風力促進小委員会)では、世界的な物価上昇に起因する洋上風力発電事業者の撤退が海外で相次いでいることに言及し、日本でも類似するケースが起きるのを未然に防ぐための議論が行われた。洋上風力は投資額が大きく、総事業期間も長期であることを踏まえて、事業者だけでは取りきれないリスクの一部を制度側で検討する趣旨である。
同専門家会合では、入札で落札した後、建設期間における資材価格等の変動を基準価格に連動させることを検討している。インフレの場合のみならず、デフレが起きた場合にも同様の調整を上限と下限をそれぞれ設定して調整していく方向である。
2025年度の洋上風力発電事業者の公募(第4ラウンド)から制度が適用される見通しで、すでに実施された第1〜3ラウンドで落札されたプロジェクトにも遡及適用されるかどうかは明らかになっていない。
第1回ラウンドでは、三菱商事が代表企業を務めるコンソーシアムが3つの海域、合計1.69GWを落札した。第2ラウンドはジャパン・リニューアブル・エナジー、JERA、三井物産、住友商事がそれぞれ代表企業を務めるコンソーシアムが4つの海域で合計1.79GWを落札した。第3ラウンドは2024年7月に公募が締め切られ、結果は年内に公表される見通しである。
再エネ海域利用法は、2019年4月1日に施行された。漁業者など海域の先行利用者との調整を図った上で、洋上風力発電事業を推進するための促進区域を国が指定し、公募によって選定した発電事業者に対して最大30年間の海域の占用を認める制度である。現状の区域の指定及び整理状況は、「促進区域」が10ヵ所、「有望区域」が9ヵ所、「準備区域」が11ヵ所である。促進区域に指定されたのちに、経済産業省と国土交通省が実施する入札制度によって落札事業者が決まり、洋上風力の開発が行われる。