
(画像:住友電気工業)
北海道電力は8月1日、AIを活用した系統用蓄電所需給管理サービス「Enerista(エネリスタ)」の申込受付を開始したと発表した。2026年4月より全国の事業者を対象にサービスの提供を開始する予定で、同社にとって本格的な蓄電所事業への参入となる。
同サービスは、蓄電所の運用に必要な需給管理業務を一括して受託するサービスである。具体的には、充放電計画の策定をはじめ、各種市場(卸電力市場、需給調整市場、容量市場)への入札、電力広域的運営推進機関への計画提出、計画値同時同量の監視、各種精算業務までを北海道電力が代行する。
サービスの中核となる需給管理システムは、エネルギー分野でAIを活用した実績を持つベンチャー企業のグリッドと共同開発しており、2025年8月の完成を予定している。AIを用いて天候、需要、市場価格を予測し、最適な入札計画を自動立案することで収益の最適化を行う。また、通信回線を通じて各蓄電池のEMS(エネルギーマネジメントシステム)と連携し、リアルタイムでの充放電制御を行う。さらには、運用実績のデータを取り込み、運用に反映する計画だ。
北海道電力グループでは、2022年に北海道電力ネットワークが住友電気工業のレドックスフロー電池(RF電池)を活用した系統用蓄電所(17MW/51MWh)を北海道安平町の南早来変電所に設置している。一方で、北海道電力はこれまで、蓄電所の開発や運用に関する実績はなかった。2024年4月には、札幌市で進められている蓄電所案件「Helios I」(50MW/104MWh)の建設を請け負い、土地の貸与や建設の受託などの形で他社事業には関わってきた。したがって、北海道電力としては今回の需給管理サービスを通じて、初めて蓄電所事業へ本格的に参入することになる。
同分野では、東京電力ホールディングス、関西電力、東北電力、中国電力、四国電力などがすでに自社または共同出資で蓄電所を開発・運営している。関西電力は子会社のE-Flowを通じて、第三者が保有する「群馬太田蓄電所」(容量:8.14MWh)などの運用実績も持つ。こうした流れの中で、北海道電力も蓄電池分野への取り組みを強化する動きを見せている。
なお、共同開発先のグリッドは2009年に創業し、2024年9月には需給調整市場の取引会員にも加入している。