
落札価格の安さに注目が集まっていた
三菱商事は2月3日、再エネ海域利用法に基づく洋上風力第1ラウンドの公募で落札した3海域(合計出力:1.7GW)について、第1ラウンドの公募結果が公表された2021年12月以降、想定を上回る事業環境の変化に伴い、事業性の再評価を行なっていると発表した。
同社によると、新型コロナウイルスの蔓延やウクライナ危機、インフレ、円安、サプライチェーンのひっ迫、金利上昇など、洋上風力業界を取り巻く事業環境が世界的に大きく変化していることを理由に事業性の再評価を行なっているという。また、その結果を踏まえて、今後の対応方針を検討していく考えを明らかにした。
落札した3海域のコンソーシアムは、三菱商事、三菱エナジーソリューションズ、中部電力のグループ会社であるシーテックで構成されており、「秋田県由利本荘市沖」の事業ではウェンティ・ジャパンも参加している。落札した3海域それぞれの出力とFIT価格は以下の通りだ。
- 秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖 (478.8MW、13.26円/kWh)
- 秋田県由利本荘市沖 (819MW、11.99円/kWh)
- 千葉県銚子市沖 (390.6MW、16.49円/kWh)
第1ラウンドで落札した三菱商事のコンソーシアムは、他の公募参加事業者と比べて圧倒的に安いFIT価格で落札している。なお、同公募の第1ラウンドはFIT(固定価格買取制度)が適用され入札を行なったが、第2ラウンド以降はFIP(フィード・イン・プレミアム)が適用されている。
再評価の結果によっては、事業の中止も考えられるが、経済産業省の専門家会合(「洋上風力促進ワーキンググループ」)は昨年より洋上風力の「価格調整スキーム」について議論しており、同制度が導入された場合、三菱商事が制度の適用を受ける可能性は十分にある。
「価格調整スキーム」は洋上風力開発のサプライチェーンのひっ迫やインフレによる費用が増大していることなどを理由に、落札後1度のみ資材等のコストや為替レートの変動を考慮し価格調整を行う仕組みである。
同制度については、将来の物価変動に限定して基準価格に反映されることとなり、制度が導入された場合、三菱商事のコンソーシアムは公募占用指針の変更を行い、その後、変更された指針に基づく計画変更申請を行う必要があり、変更申請が妥当であるかの判断については、学識経験者又は第三者委員会の意見を聴取した上で適用される。
また、三菱商事がスキームの適用を受けなかったとしても、同事業をFITからFIPに移行し、PPAなど落札したFIT価格よりも良い条件で取引できる供給先を見つけるという選択肢も残されている。