
電源構成にも影響を与えるとみられる
本記事は2025年8月26日に掲載し、翌27日に三菱商事が対象事業の中止を正式に発表しました。
2021年に実施された国内初の洋上風力第1ラウンドで、全3海域を落札した三菱商事などのコンソーシアムが、開発計画からの撤退に向けて調整に入っていることが、8月26日までに日本経済新聞など複数のメディアにより報じられた。資材価格や人件費の上昇、為替や金利の変動などを背景に、採算性が確保できないと判断したとされる。
対象となる3海域とその落札価格は、以下の通り。
- 秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖 (478.8MW、13.26円/kWh)
- 秋田県由利本荘市沖 (819.0MW、11.99円/kWh)
- 千葉県銚子市沖 (390.6MW、16.49円/kWh)
これらの案件はそれぞれ2028年または2030年の運転開始を目指していた。落札した事業体は、三菱商事、三菱エナジーソリューションズ、中部電力グループのシーテックを中心に構成され、「秋田県由利本荘市沖」の事業ではウェンティ・ジャパンも参画していた。
三菱商事は2025年2月に、事業性の再評価を行っていることを発表しており、背景にはインフレや円安、サプライチェーンのひっ迫、金利上昇などの事業環境の変化がある。同社は、秋田県には2025年夏頃までに評価結果を報告する意向を示しており、千葉県からは2025年3月、説明不足を指摘される場面もあった。
これら3海域について、当初から他の入札を大きく下回る価格での落札が注目されていたが、現状ではその価格水準での採算性確保が困難となった。
なお、経済産業省および国土交通省の「公募占用指針」によると、事業者が中止を決定した場合にはその理由を確認し、必要に応じて再公募を実施する可能性がある。また、違約罰として、保証金(総額:最大で約220億円)が全額没収される見込みである。同指針によると、第2次保証金は5,000円/kW、第3次保証金は13,000円/kW、系統工事実施のための保証金を一般送配電事業者に提供している場合には、減額の可能性がある。なお、第1次保証金および第2次保証金は第3次保証金に充当済みとされている。
さらに、先週には、主要工事を担う予定だった鹿島建設の撤退も報じられており、仮に再公募が行われた場合でも、開発コストの大幅な増加は避けられない状況となっている。
お詫び (2025年8月27日): 没収される保証金の総額に誤りがありましたので、訂正してお詫び申し上げます。