
(画像:飯塚市)
福岡県の飯塚市は、2月20日開催の「2025年第1回定例会」において、太陽光発電事業に伴う土砂災害の発生を防止し、生活環境の保全のための新たな条例案を市議会に提出した。これに対して、3月4日には市議3名が市による事業の「許可制」の導入を求める対案を提案した。
市が提出した条例案では、太陽光発電事業を行う区域が1,000m2以上の場合を対象に、設置の際の基準を定めた。具体的には、市長が太陽光発電事業の「禁止区域」を指定する権限を持ち、同区域での事業は認められない。禁止区域には、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域 、土砂災害特別警戒区域、保安林、宅地造成等工事規制区域などを含める。
また、特に配慮が必要と認められる区域を「抑制区域」として指定し、事業者に対しその区域内での事業実施を控えるよう求めることができる。抑制区域には、周知の埋蔵文化財包蔵地、福岡県指定史跡名勝天然記念物が所在する区域、飯塚市指定史跡名勝天然記念物が所在する区域などを含める。
さらに、条例案は事前協議のプロセスを明確にしており、事業者は設置工事に着手する60日前までに事業計画を市長に届け出なければならない。届出後、45日以内に周辺関係者に対して事業計画等に関する説明会を開催することも義務付けており、周辺住民との良好な関係構築を促す内容となっている。
また、太陽光発電事業を実施する前に、災害の発生の防止及び生活環境の保全に関する事項等について、周辺関係者と協定を締結しなければならないことも盛り込んだ。
この条例案に対して、市議3名は太陽光発電事業の実施可否について、市が責任を持って判断する「許可制」を導入すべきとする対案を提出。また、10kW以上の太陽光発電所を条例の対象とすることを提案した。
太陽光発電事業をめぐっては、地域との共生や土砂災害への懸念等が全国的に関心を集めており、宮城県では昨年4月より再エネ発電設備の適地誘導を目的にした「再生可能エネルギー地域共生促進税」条例を施行した。また、青森県では自然・地域と再エネとの共生条例の施行規則(案)の意見募集を今月22日まで行っており、最終局面を迎えている。青森県の場合、太陽光2MW・風力500kW以上を対象とした条例案である。
飯塚市の条例案と市議提案の対案は、3月10日に開催する市議会協働環境委員会で審議する予定だ。