
発電事業の効率的な運用を支援する
経済産業省の専門家会合(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会)は先月、2024年4月に改正した「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」(通称:再エネ特措法)について、発電事業の周辺住民への説明会要件の一部を緩和する考えを示した。
具体的には、発電事業者が一定の条件を満たす場合、説明会の実施義務を緩和する方針だ。再エネ発電事業者には、FIT/FIP認定の要件に周辺地域住民との信頼関係を築き、地域との共生を図るために事業計画や工事概要、安全対策、景観への配慮等などの情報を住民に事前に周知することが求められている。
特に、特別高圧や50kW以上の高圧事業については、説明会の開催を義務づけ、発電所の敷地境界から300m以内の居住者や、発電所に隣接する土地や建物の所有者を対象としている。また、説明会は、原則としてFIT/FIP認定申請日の3ヵ月前までに開催しなければならない。その際、地域の実情を把握する市町村への事前相談を行い、その他に「周辺地域住民」に加えるべき対象を確認することも求めている。さらに、事業の変更など発電事業計画に重要な変更がある場合、新規事業を開始する場合と同様の手続きを求めており、変更認定を行う際には、改めて説明会を開催する必要がある。
改正から1年を迎えた再エネ特措法において、施行状況を踏まえた見直しの検討を進めており、今後はこれらの要件を一部緩和する方向である。
明らかに「周辺住民」がいない場合には説明会の開催を不要とすることを提案した。資源エネルギー庁のホームページ上で説明会の案内が適切に行われ、かつ説明会の開催予定日の前々日までに、隣接する土地や建物の所有者から説明会への出席を希望する旨の連絡がなかった場合には、説明会の開催は不要と判断する方針だ。また、説明会に出席する周辺住民がいなかった場合、説明会から3ヵ月を待たずにFIT/FIPの認定申請を行うことも認めるという。
事業者の変更に伴う説明会要件については、認定を受けた「長期安定適格太陽光発電事業者」に関して、ポスティングなどの方法での事前周知を認め、事業の効率的な運用を支援していく考えだ。長期安定適格太陽光発電事業者とは、①地域の信頼を得られる責任のある事業者で、②長期安定的な事業の実施が見込まれ、③FIT/FIP制度によらない事業実施が可能である再エネ発電事業者(競争的な環境の下で実施されている太陽光発電事業の50,000kW以上の実績)が認定を受けるものであり、昨年より議論が進んでいる制度である。
これまで、住民の理解を得ることが難しいなどの理由で、奈良県の五條市が計画していたメガソーラー事業やJR東日本エネルギー開発が山形県米沢市で計画していた陸上風力発電事業の中止が発表されている。再エネ発電事業の推進には、自治体や周辺住民の理解が不可欠であるとともに、効率的に事業を推進していくことも必要であることから、同審議会では制度の見直しを行う方針だ。