
運転している(画像:九州電力)
九州電力は5月19日、中長期的な経営計画方針「九電グループ経営ビジョン2035」を公表し、脱炭素化に向けた取り組みの一環として、次世代革新炉の開発・設置に向けた検討を進める方針を明らかにした。
同社の次期社長に内定している西山勝常務執行役員は5月19日に行われた記者会見で「これからも原子力は大事なものであり、これを検討していくことはエネルギー事業者として必須だろう」と述べた。
一方で、複数の報道機関が「川内原発敷地内での次世代炉設置を検討中」と報じたことについて、九州電力は同日付で否定した。現時点では具体的な場所を前提とした検討は行なっておらず、報道各社に記事の訂正を求めている。川内原子力発電所については、現在1・2号機(総出力:1.78GW)が通常運転中であり、3号機は過去に新設することを検討していたものの、現在は凍結中となっている。
今回の九州電力の動きは、政府が2025年2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」と整合する。同計画では、「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源を最大限活用することが必要不可欠」と明記されており、廃炉が決定した敷地内での次世代炉建設への建て替えも政策的に容認されている。
九州電力はすでに、玄海原子力発電所の1号機(2015年運転終了)および2号機(2019年運転終了)の廃炉作業を進めており、玄海3・4号機(各出力:1.18GW)および川内原子力発電所1・2号機の4基を再稼働済み。九州電力は具体的な立地について現時点で決まったものはないとしているが、かつて新設計画のあった川内原子力発電所3号機(出力:1.59GW)の敷地が、将来的には次世代炉設置の有力候補となる可能性もある。
九州電力は今後も国のエネルギー政策や需給見通し、原子力発電の事業環境の動向などを踏まえ、次世代原子力設置の可能性を検討していく方針である。