
経済産業省の専門家会合(調達価格等算定委員会)は先月17日、屋根設置型の太陽光発電設備の導入を加速するための「初期投資支援スキーム」について議論を行った。
より早期に投資回収ができるよう「初期投資支援期間」を設け、その間のFIT/FIP価格を現行よりも手厚くし、その代わりに調達期間の短縮や初期投資支援期間後のFIT/FIP価格を減らす具体案が示された。その前提条件として、自家消費の促進を妨げないこと、また国民負担が増えないことが挙げられている。
事業用太陽光については、初期投資支援期間を5年、「初期投資支援価格」(初期投資支援期間中のFIT/FIP価格)を19円/kWh程度、住宅用太陽光については4年、24円/kWh程度とすることで、投資回収の早期化の効果を最大化できるという算定結果が示された。また、事業用太陽光のFIT/FIP期間は従来通り20年間、住宅用太陽光はこれまでの10年間から4年間に短縮する案が示された。
自家消費の促進を妨げないために、建物の所有者にとって発電する電力を自家消費した方がコストを抑えられるよう算定された。自家消費便益の想定値(自家消費した電力分を電力会社から購入した場合の電気料金相当分)は、産業用電気料金を19.56円/kWh、家庭用電気料金を27.31円/kWhとし、それを上回らない水準で初期投資支援価格が計算された。
また、国民負担の抑制については、過去の実績に基づいて加重平均後の卸電力取引市場価格の水準を8.3円/kWhと設定し、割引現在価値ベース(割引率:2%)を用いて、国民負担が増えないよう前提条件が設定された。
同専門家会合によると、個人や中小事業者など、財務体力が限られている建物所有者にとって、投資回収年数の長さが太陽光発電設備の導入に向けた障壁になっていると考え、同スキームの導入が検討されている。また、経済産業省と国土交通省は、2030年までに新築戸建住宅の60%への太陽光発電の設置を目標としているものの、現時点での設置率は31.4%に留まっているため、再エネの導入を拡大していくための新たな施策として考えられている。
同スキームの導入時期は、現時点では明らかになっていないものの、同専門家会合では2025年度のFIT/FIP価格は既に設定されていること、また2026年度から適用することとした場合、事業者にFIT/FIP認定の時期を遅らせるインセンティブが生じる可能性があることが指摘されていることから、早期に導入したい考えであることを示唆している。
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