地域新電力の設立が続く、脱炭素目標の実現と経済効果を期待

2025年1月11日
人口減少や経済の停滞により、多くの地方財政は
厳しい状況にあるため、経済効果も期待される

地域新電力の設立は現在も続いている。地域新電力などの設立・運営支援を行っている、一般社団法人ローカルグッド創成支援機構によると、自治体が出資または協定により連携している地域新電力は電力小売全面自由化を迎えた2016年度前後の5年間に大幅に増え、当時は毎年10社以上の地域新電力が設立された。

2020年度冬季の電力需給のひっ迫により市場価格が高騰したことで廃業や倒産を余儀なくされた新電力が相次ぎ、一部の地域新電力も例外ではなかった。2020年度には設立数が鈍化し、1年間で10社を下回った。しかし、現在でも地域新電力の設立の流れは続いている。2024年4月時点で小売電気事業者登録がされている地域新電力は、100社を超えるという。2024年12月末現在、小売電気事業者は769社登録されているため、7社に1社は地域新電力である。

近年の脱炭素化の流れと限られた再エネ電源を確保して電力の地産地消を目指すことは、脱炭素目標の達成への第一歩となる。さらには、地域で電力需給を完結することで地域への経済効果が期待される。例えば、直近で設立された地域新電力は以下の通り(括弧内の日付は設立日)。

久喜新電力は、久喜市内で発電した電力を同市内の公共施設や民間施設に供給することで「2050年までにCO2の排出を実質ゼロにすることを目指す地方自治体(ゼロカーボンシティ)」の実現への貢献と地域経済の活性化に取り組んでいくという。同社の出資比率は、久喜市が51%、小売電気事業者のホームタウンエナジーが40%、ケーブルテレビが9%である。

よっかいちクリーンエネルギーは、三重県四日市市内のごみ処理施設「四日市市クリーンセンター」で発電した電力を市内の公共施設に供給し、エネルギーの地産地消を目指す。同社の出資比率は、四日市が51%、東邦ガスが22%、日鉄エンジニアリングが22%、三十三銀行が5%である。

スマートエネルギーとっとりは、ゼロカーボンシティの実現に向けた道筋を付け、地域経済循環の活性化を目指し、主に住宅用や事業所、公共施設などのPPAサービスと太陽光発電事業を行うという。出資比率は、鳥取市が47.0%、ダイヤモンド電機が21.5%、城洋が21.5%、市民エネルギーとっとり鳥取銀行がそれぞれ5%ずつである。

六ヶ所エネルギーマネジメントは、地域の脱炭素化を最大の目的に設立された。短期的には、太陽光発電や蓄電池の導入による再生可能エネルギーの活用促進、将来的には六ヶ所村のエネルギー産業創出を推進する事業体を目指すという。出資比率は、六ヶ所村が55%、青森風力開発が21%、パシフィックパワーが21.0%、みちのく銀行が3.0%である。

政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを2020年10月に宣言し、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(通称:温対法)では、都道府県及び市町村は、温室効果ガスの排出の削減のための施策の策定と実施に努めることが求められている。そのような背景から、ゼロカーボンシティを表明している地方公共団体は2020年の166自治体から2024年12月27日時点では1,127自治体に大幅に増加した。前述の地域新電力に出資する地方自治体(久喜市、四日市市、鳥取市、六ヶ所村)もすべてゼロカーボンシティを表明している。これらの流れの一環で、地域新電力の設立が続いているものと思われる。

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